10年前に入った火災保険、今の暮らしに合ってますか?
〜築20年以上の戸建てこそ、補償内容の見直しが大切です〜

はじめに:その火災保険、建てたときのままになっていませんか?
家を建てたとき、住宅ローンと一緒に「火災保険」に加入した方は多いと思います。
そしてそのまま、更新時にも特に内容を確認せず「自動更新」「団体契約のまま継続」になっていませんか?
実は、こうしたケースこそ、最も“補償のズレ”が起こりやすいのです。
10年、20年と月日が経つうちに、家の状態も、家族構成も、持ち物も大きく変化します。
しかし、保険だけが当時のままだと、いざという時に「対象外」「保険金が足りない」ということも。
“加入しているから安心”と思っていたのに、実際には守られていなかった――。
そんな残念なケースを、私たちは数多く見てきました。
この記事では、築20〜30年の戸建てに住む方に向けて、
「火災保険の見直しがなぜ必要なのか」「どう見直せばよいのか」を、専門家の視点でわかりやすく解説します。
築20〜30年の戸建て所有者に多い“見直し忘れ”の実態
40〜60代の戸建て所有者の方から、私たちはよくこんな声を聞きます。
「ローンのときに勧められて入った保険を、そのまま更新してるだけで…」
「内容はよくわからないけど、火災の時に出ると思ってる」
「団体契約だからお得なんでしょ?」
「保険って難しいし、何を見直すのかもわからない」
これらの声は決して珍しくありません。
多くの方が「火災保険=火事の時だけ出るもの」と思い込んでいます。
しかし実際には、火災保険は“総合的な住まいの保険”であり、
火災以外にも、台風・水害・雪害・破損・盗難など、自然災害から日常事故まで幅広くカバーしています。
問題は、当時の暮らしに合わせた内容のまま、今も契約を続けていること。
家族構成、リフォーム履歴、家財の価値、地域リスク——。
これらが大きく変わっているのに、補償内容だけが取り残されているケースが非常に多いのです。
なぜ今、火災保険の見直しが必要なのか?
① 建物の「状態」や「価値」が変化している
築20年以上の家は、経年劣化やリフォームを経て、建てた当時と状況が大きく異なっています。
・外壁や屋根をリフォームした
・太陽光パネルや蓄電池を設置した
・バリアフリー化や内装リフォームを行った
こうした改修・増築は、保険契約時の「建物情報」とズレを生みます。
保険は契約時点の建物構造・材質・面積などに基づいて補償金額を算出しているため、保険金額支払いの上限額が、現在と比べて低い設定の場合があります。リフォームや増改築された場合は、保険金額の上限を変更する必要があります。
② 家財・持ち物の価値が上がっている
10年前と比べて、家の中の家電や家具の価値はどうでしょうか?
テレビ、冷蔵庫、パソコン、スマート家電、ホームジム機器、オーディオ機器…。
昔に比べて家電は高性能化し、1つあたりの価格も上がっています。さらにテレワークの普及により、自宅にパソコンやモニターなどの“仕事設備”を持つ人も増えました。
にもかかわらず、家財保険の上限金額を当時のままにしている方がほとんど。これでは、火災や水害、盗難時に「保険金が足りない」事態に直面します。
特に注意したいのは、「家財補償は世帯構成で変わる」という点。
子どもが独立して家財が減ったと思いきや、趣味の道具や高価な家電が増えている——
そんな家庭も多いのです。今の家財の価値を再確認することが大切です。
③ 保険制度・料率の改定が頻繁に行われている
火災保険はこの10年で大きく変わりました。
2022年には契約期間が最長10年 → 5年に短縮され、自然災害の多発を受けて保険料の上昇も続いています。
さらに、保険会社によっては築年数・地域・構造に応じて料率を細かく設定するようになり、同じ条件でも会社ごとに年間数万円の差が生まれることもあります。
つまり、「昔からの契約だから安心」ではなく、今の方が安く・手厚くなるケースもあるということです。
保険会社の改定情報は一般家庭には届きづらいため、「知らずに損をしている」方が非常に多いのが現状です。
④ 想定外のリスクが増えている
ここ数年、異常気象による住宅被害は増え続けています。
・台風の大型化(風速50mを超える事例も)
・集中豪雨や内水氾濫による浸水
・落雷・竜巻による屋根破損
・積雪によるカーポートや屋根の崩落
気象庁のデータでは、1時間に50mm以上の大雨の発生回数は40年前の約2倍。
つまり、かつて“想定外”だった災害が、今は“日常的に起こるリスク”に変わっています。
にもかかわらず、契約時に「水災補償」「破損汚損補償」を外している方が多いのが現実。これでは、最も被害を受けやすい部分が守られていない状態です。
☑ 20年前より豪雨被害は倍増
☑ 水害による住宅全壊・半壊は年間1万棟超(国交省統計より)
保険の見直しは、“起きてから後悔する前”にこそ必要なのです。
実際にあった「見直しておけば良かった」事例
【事例①】家財の補償が足りず、実損の半分しか受け取れず
築28年のBさん(62歳)は、奥様と二人暮らし。
子どもが独立し、使っていなかった2階の部屋を洗濯スペースにリフォームしました。
ある日、洗濯機の給水ホースが外れ、深夜のうちに床下まで水が広がってしまいました。
1階の天井や家具が水浸しになり、修理や買い替えに約80万円の出費。
慌てて火災保険を申請したところ、家財補償の上限が50万円で設定されていたため、差額の30万円は自己負担に。
契約書を確認してみると、その金額設定は「20年以上前の契約当時」のままでした。
当時は子どもが小さく、家財もそれほど多くありませんでした。
しかし今は、テレビも冷蔵庫も買い替え、パソコンや調理家電、趣味のカメラなども増加。
家財の総額は当時の倍以上になっていたのです。
「こんなに生活が変わっているのに、保険のことはすっかり忘れていました」とBさん。
補償内容を“家の中の変化”に合わせて更新することの大切さを痛感したそうです。
【専門家コメント】
家財補償は「家の広さ」ではなく「持ち物の価値」で考える必要があります。
子どもの独立やリフォーム、趣味の充実などによって家財構成は変化します。
5年ごとに見直すのが理想です。
【事例②】水害リスクを軽視していた結果…
Cさん(58歳)は、川沿いの住宅地に住む3人家族。
これまでの人生で水害といえば“近くの道路が冠水する程度”で、自宅が浸水したことは一度もありませんでした。
そのため、保険加入時に営業担当者から「水災補償も付けますか?」と聞かれた際、「うちは高台だから大丈夫」と外してしまったそうです。
しかし2023年の夏、記録的な豪雨が発生。
普段は穏やかな川が氾濫し、あっという間に1階が床上浸水。家電・家具・畳が全滅し、復旧費用は約200万円にのぼりました。
ところが、水災補償を付けていなかったため、一切の保険金が支払われず、すべて自己負担に。
【専門家コメント】
“ハザードマップ上では安全地帯”と思われていても、近年は内水氾濫やゲリラ豪雨による局地的浸水が増えています。
水災補償の有無で、被災後の生活再建スピードが大きく変わります。
被害額は平均200〜300万円に達することもあり、コストパフォーマンスの高い補償です。
【事例④】団体割引だからと放置していた結果…
Dさん(60歳)は、かつて勤務していた企業の団体保険に加入していました。
退職後も「継続手続きができるなら安心」と思い、そのまま契約を延長。
しかし、築30年を超えた今、火災保険の見直しを依頼したところ驚きの事実が。火災保険の“建物評価額”が古く設定されたままで、万一全焼しても実際の再建築費用の6割しか支払われない契約になっていたのです。
しかも、過去10年以上、団体割引の恩恵よりも保険料の見直し機会を逃しており、結果的に総支払額では個別契約より高くついていたことも判明。
Dさんは「割引率ばかり見ていて、補償の“中身”を見ていなかった」と反省。
「安さよりも、いざという時に“本当に足りるか”を見極めるのが大事」と語ります。
【専門家コメント】
団体割引はお得に見えますが、長年放置していると建物評価額が実情に合わなくなります。
築年数20年を超えたら、“再建築費ベースでの再評価”を必ず行いましょう。
火災保険の真価は「いくら補償されるか」にあります。
どんな人が見直しを検討すべき?
以下の項目に1つでも当てはまる場合、今すぐ見直しを検討しましょう
☑ 家を建ててから20年以上経っている
☑ 火災保険を10年以上見直していない
☑ リフォームや太陽光設置をしている
☑ 家財保険の内容を把握していない
☑ 自治体のハザードマップを確認していない
☑ 団体契約や自動更新のままにしている
☑「いざという時、いくら出るか」即答できない
2つ以上当てはまるなら、「今の暮らしに合っていない可能性」が高いです。
見直しのポイント:ここを押さえれば安心
① 「建物」と「家財」を分けて考える
火災保険は「建物」と「家財」で補償が明確に分かれています。
意外と知られていませんが、火事や水害が起きたとき、家そのもの(柱・壁・屋根など)を守るのが建物補償、室内にある家具・家電・衣類・パソコン・自転車・趣味の道具などを守るのが家財補償です。
多くの方が「家だけ保険に入っていれば大丈夫」と思いがちですが、実際の被害では“中のモノ”の損害額のほうが大きいケースも少なくありません。
例えば、リビングのテレビ・冷蔵庫・エアコン・ソファなどを一式買い替えるだけでも、50万円〜100万円を超えることは珍しくありません。
② 「自然災害」の補償範囲を確認
火災保険は「火災」だけを守るものではなく、風災・水災・雪災・雹災(ひょうさい)・落雷などの自然災害も補償範囲に含まれています。
ただし、契約内容によっては「風災だけ」「雪災は対象外」など、補償の範囲に差があるため、一度、自分の契約書やマイページで細かく確認することをおすすめします。
特に最近は、台風やゲリラ豪雨などで想定外の地域が浸水するケースが増えています。
「自分の地域は安全」と思っていても、実際には自治体のハザードマップで“浸水リスクあり”と表示されていることもあります。
水災補償を外してしまうと、床上浸水や土砂流入が起きた場合に、数百万円単位の修理費を自己負担することにもなりかねません。
補償内容を見直す際は、「過去」ではなく「近年の災害傾向」を基準に考えることが重要です。
③ 「自己負担額(免責金額)」の設定を見直す
火災保険では、被害が起きたときに自分で負担する金額(免責金額)を設定します。この金額を高くすると保険料は下がりますが、その分、被害時の自己負担が増えます。
たとえば免責が「10万円」の契約なら、台風で屋根が8万円損傷しても保険金は出ません。
一方、免責が「0円」なら小さな被害でも補償されますが、保険料はやや高めになります。
大切なのは、「自分の地域リスクと家計バランスに合わせて調整する」ことです。
沿岸部や山間部など、自然災害が起こりやすいエリアでは免責を低めに設定した方が安心です。
逆に被害リスクが低く、小規模補修は自己負担で対応できるという方は、免責を上げて保険料を抑える方法もあります。
この設定ひとつで年間数千円〜数万円の差が出ることもあるため、保険料の見直しをする際は、“補償を削る”よりも“免責を調整する”方法を検討しましょう。
④ 「保険金の支払い条件」を理解しておく
火災保険の補償は「原因」によって支払いの可否が変わります。
同じ「破損」でも、
・台風により外壁が損害を受けて、そこから雨が侵入してきた場合は補償対象
・老朽化による雨漏りは対象外(外壁に損傷がない、雨や風の吹き込みは対象外)
といったように、“偶然の事故”かどうかが判断基準になります。
また、最近の火災保険には「破損・汚損等の補償」特約を付けられる場合があります。
これは、家具をぶつけて壁に穴を開けた、テレビを倒して割ってしまったなど、日常生活の不注意による損害にも対応できる特約です。
「火災保険でそんなことまで?」と思うかもしれませんが、実際にこの特約を付けていたおかげで修理費10万円前後が支払われたケースも多数あります。
万一のときの安心を広げるために、“どんなときに出るのか”を理解したうえで特約を活用することが大切です。
■ 火災保険の見直しステップ
① 現契約の内容を確認
まずは、現在加入している火災保険の契約書・証券を確認しましょう。紙の証券が手元にない場合は、保険会社のマイページでも確認できます。
「補償内容」「保険金額」「免責金額」「特約」などを一覧で把握し、“自分が何をどこまでカバーしているのか”を明確にすることがスタートラインです。
② 建物・家財の現状を整理
次に、現在の家の状態と家財の変化を振り返ります。
リフォーム、外壁塗装、太陽光パネルの設置、家電の買い替え、家具の増減など、過去の契約時から変わったポイントをリストアップしましょう。
写真を撮っておくと、将来の見直しや被害時の申請にも役立ちます。
③ 地域リスクを調べる
自治体が公開しているハザードマップを確認し、自宅がどのようなリスク(洪水・土砂災害・地震など)にさらされているかを把握しましょう。
同じ市内でも標高や地盤によってリスクは大きく異なります。
近年では「風災・水災・地震」が同時に発生するケースもあるため、複合的な災害に備えた補償設計が求められます。
④ 専門家に相談
契約内容を確認しても「どこをどう変えるべきかわからない」という方は、地域密着の保険代理店や専門相談窓口に相談するのがおすすめです。
家の構造や築年数、立地を踏まえて、「この補償は残して」「この特約はいらない」など、プロの視点で整理してもらえます。特に築20年以上の家では、実際の修理費とのギャップを考慮したアドバイスが重要です。
⑤ 複数社で比較・見積もり
火災保険は保険会社ごとに補償内容・保険料が異なります。1社だけで決めず、複数社の見積もりを比較しましょう。
建物評価額・特約・免責条件をそろえて比較すると、同じ補償でも年間で1万円以上違う場合もあります。
比較の際は、「保険料の安さ」よりも「補償のバランス」を優先するのがポイントです。
⑥ 新契約に切り替え or 更新
見直し結果に基づいて、新しい契約に切り替えるか、現契約を更新するかを決めましょう。
切り替えの場合は、保険の空白期間が生じないように更新期日の約2ヶ月前から手続きを始めるのが理想です。
また、住宅ローンに付帯している団体保険の場合は、金融機関への連絡も忘れずに行いましょう。
まとめ:暮らしに合った「今の保険」で、家族を守る安心を
火災保険は、“入っていれば安心”ではなく、“今の暮らしに合っているか”が大切です。築20年、30年の家は、もう当時の家とは違います。家族構成も、持ち物も、地域の環境も、すべてが変化しています。
古い契約をそのままにしておくと、いざという時に「想定外の出費」に苦しむことにもなりかねません。今こそ、「建てたときのままの保険」を卒業し、“今の暮らしを守るための保険”へアップデートしましょう。
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